宮崎県キャリア教育総合推進事業 キャリアアップ・キャラバン 鳥居徹也
宮崎の皆様、ありがとうございました!
2012年10月18日(木)を持ちまして、
宮崎県の全公立高校45校の講演を無事終了しました。
県内すべての学校回る、という経験はもちろん初めてであり
最初は「どうなることか…」と一抹の不安を抱えつつ
始まった、この宮崎県キャリアアップ・キャラバン。
思い起こせば…

3年前にこの事業がスタートしたとき、
宮崎県はまさに、口蹄疫の渦中にありました。
当初予定していた「フリーター・ニート予防」という問題よりも、
高校生の自己肯定感をいかにするか、というテーマに切り替えましょう、という
田代指導主事のアドバイスにより、講演内容を見直しました。
それがまた、私自身の1つの転機になったかと思います。

★フィードバックがよかった

1stステージの何校目でした。
講演後に「質問ありませんか?」と聞きました。
誰も手が挙がりません。
そのとき私はつい、次のように話してしまいました。

 「では質問がありましたらアンケート用紙に書いてください、お返事します」

この最後の「お返事します」のおかげ(?)で、
私は講演後に、200通を超える質問に答えることになりました。
すべてに回答しました。
結構大変でした。
しかしまた、ものすごく勉強になったのです。
この大量のフィードバックは、私の講演内容・構成・配列・発問表現などを
マイナーチェンジするきっかけとなり、今に至ります。

私の講演の最大の目的は、「楽観性」のすすめです。
楽観的な人は、トラブルに遭っても、それを一時的に、限定して考える。
だからみんなもそうしよう、などといって講演を閉めていました。
すると早速アンケートに「楽観的になる方法を教えてください」という
山のような意見が寄せられます。

 (おかしいなあ、講演でしゃべったはずなのに…)

自分ではそのつもりでいました。
そして数字的なアンケートもよかったので満足していました。
しかしやはり、生の声は大事です。
私は講演内容を見直しました。
そして「三行日記・三行メール」の紹介を始めました。

 (アスリートが筋トレをするように、私たちも心の筋トレを毎日すべきだ)

心の筋トレが「三行日記・三行メール」です。

 (これで具体的な方法を提示したぞ、これでいいだろう)

そうして4thステージまで終えました。
そして今年の5月の5thステージ。
講演後に私は1つの質問を受けました。
その質問は私にとって大変ショッキングなものでした。
それは…

 「トリイさんも、落ち込むことがあるのですか?」

びっくりしました。
私は大変悲観的な性格で今まで生きてきて、
それをなんとか克服してきました。
しかし今でも、悲観的なところはもちろん残っています。
それが、「楽観的になろう!」というような講演をしているため
楽観的な人間だと思われている…

 (これはいけない。それでは私の学校時代の失敗談を話そう…)

そして高校での部活動の話、
大学のゼミで女性問題でつるし上げられた話を追加しました。
その効果は…絶大でした。
例えばこんな感想をもらうようになりました。

(高校2年 女子)
先生の講演会は面白かったし、心の中から温かいものがじんわりと出てくるような、そんな感じでした。先生の過去の話も、余計に先生という人を尊敬できるなって思いました。今まで楽しいことしかなくて明るい世界しか見たことない人の話だったなら、あまり信じられないところもあったと思うけど、先生は陰みたいなところを良く知っていて、その上で講演会をしてるから、すんなりと自分の中に入ってきました。

(高校3年 男子)
はじめて講演が楽しいと思いました。しかし、鳥居さんも元は悲観的な方だと聞いて信じられませんでした。明るい方とばっかり思っていて、体験談を聞いて驚きました。三行日記・三行メールの話をされたときに、「本当になれるかな?」と疑ってましたが、鳥居さんの高校・大学時代の話と、今の雰囲気がまったく違っていたので、僕もやってみようと思いました。今日の夜、早速やって見たいと思います。

(高校2年 女子)
講演会が終わった後、さっそく先輩と今日あった良いことを3つ言い合いました。そしたら、「そんなことがあったんだ!」と話の輪が広がり、三行メールってすごいなと思いました。

(高校2年 女子)
三行日記・三行メールの話を聞いて、先生の昔の体験談を聞いて、苦労していろいろと経験して大人になられたんだと思って私は、なんとなく救われた気がしました。私だけじゃなくて、みんなそういう気持ち・経験をしていくものなんだと思いました。学校が終わり、家に帰って友達と3行メールをやってみました。相手の嬉しいことを聞くと、自分も幸せな気持ちになれました。これからも続けて見ようと思います。

(高校2年 女子)
3行日記!とても良いことだと思います。ぜひ使わせてください。早速。私の今日の良かったことは、@お弁当に大学芋がはいっていたAリーディングと国語が自習だったB鳥居さんに会えた、ということです。このような出会いを大切にしたいです。今、私にはとても大きな悩みがあります。どうしても、どうしても、自分の中で解決できないくらい悩んでいます。だけど、私を助けてくれる先生や友達もたくさんいます。それがきっと、今つらい中での「GOOD」だと言っていいんですね。上から目線で申し訳ありませんが、つらい体験をされた先生だから、きっと私たちみんなは今日救われたんだと思います。だから私はつらい中でもポジティブに頑張って、私もたくさんの人を幸せにしていきたいと思います。 

宮崎県の高校生はほとんどどの学校でもよく話は聞いてくれましたが
私の失敗談を話す瞬間は、それこそ「シーン」。
体育館が深い静寂に包まれます。
腹の底まで響いている実感があります。
話しながら私は、

 (ああ、これでこの講演は一応の完成形になったな…)

と思いました。
宮崎県での、フィードバックをもらいながらの3年間で
私の講演は大きく変わっていきました。
関係者のみなさまには、本当に感謝しております。

特に、講演のきっかけを作っていただいた田代先生はじめ、宮崎県教委の先生方。
そして教育長の飛田先生。
宮崎大宮高校の校長先生だった頃のお話を、
たくさん聞かせていただきました。
大学受験前に、3年生全員の名前を書き込んだTシャツを着ていた、という話。
ちょっとびっくりしましたが、もっとびっくりしたのは
その話を、宮崎大宮高校で講演した後、生徒にすると

 「ああ、先輩から聞いています」

と満面の笑顔で嬉しそうに話すのです!
(気持ちが悪るがらずに:失礼!)
宮崎大宮高校は最後の学校だったのですが、
終わりよければすべてよし。
大変気持ちよく終わらせていただきました。

また各高校の先生方。校長先生方。
見るからに「教育者!」という顔をされている先生方にたくさん出会いました。
今でも何人もの先生のお顔を思い出すことができます。
教育はやはり人だな、と改めて思います。
ありがとうございました。

こうして宮崎キャリアアップ・キャラバンの最後のページを書くことには
一抹の寂しさもあります。

私には、ホテルのベッドで熟睡できないという弱みがあり、
1週間ほど続く講演旅行には、つねに不安がつきまといました。
特にこの5月は7日間で15校を回るというスケジュール。
講演の合間に、甘いものを食べながらエネルギーを補充していました。
それもいい思い出です。

宮崎のみなさま、本当にありがとうございました!



2012.12.21 


 
宮崎県キャリア教育総合推進事業 キャリアアップ・キャラバン 鳥居徹也