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9歳の壁 10歳の壁 夏見台幼稚園 千葉県船橋市

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6.絵本は生きる力を育む

 「ことば」に言及した流れで、ここではごく簡単に「絵本」に触れます。「ことば」と「手先」に人間の知能がある、と書きましたが「手先」はおもちゃで、「ことば」は絵本で、となるでしょう。

 日本の幼稚園の父とも敬称される倉橋惣三は、

「お伽噺・音楽・絵は抽象的性質を持ち、玩具は具体的性質を持つ」

と書きました。また奈良女子師範学校教授だった森川正雄は、

「子どもが玩具を弄ぶのは身体の遊戯、絵本の解釈は精神の遊戯」

と書きました(参考文献「よいおもちゃとはどんなもの」永田桂子著)。幼児教育にとっておもちゃと絵本はまさに車の両輪ですね。

 お話を聞くことや絵本を読み聞かせてもらうことは将来の読書好きにつながります。というと、勉強にプラスになるからどんどん読ませよう…となるわけですが実は「物語」の力はそんなレベルを超えています。その子の
「生きる力」になりうるのです。

 筑波大学名誉教授の小澤俊夫は西洋の昔話を研究し、その共通点を日本に紹介しました。主人公にはある条件がある。それは…

「孤立性」

だといいます(「昔ばなしとは何か」福武文庫)。主人公は孤児であるとか、貧乏であるとか、みんなに馬鹿にされたりしています。しかしその「孤立性」のゆえに、何とでも結びつく可能性があります。面白い観点です。

 そういえばハリウッドのシナリオライターが同じようなことを書いています。成功する映画には1つの共通点がある、それはシナリオが「神話の法則」に貫かれていると。極めて簡単に書きますと、

主人公の男の子が母親(母性的なもの)から離れて父親(父性的なもの)を探しにいく

 このシンプルなあらすじは世界中の神話にほぼ共通したモチーフであるといわれています。いかがでしょうか?みなさんも自分の好きな映画のあらすじを思い出しながら読んでみてください。

 主人公には必ず欠けたところがあります。逆に言えば欠点がないと主人公たる資格を失います。その欠けたところ(トラウマ、愛を知らない、恋人がさらわれたなど)を埋めるために主人公は旅立たなければなりません。物理的に、精神的に。

 そして立ち向かうべき困難やライバルは必ず自分より強いのです。そうでなければ物語は進みません。当然、主人公は勝てない。それは

俺のレベルまで上がって来い!

というライバルからのメッセージです。

 失意のどん底に叩き落され希望を失いかけたとき、どこからともなく救いの手が差し伸べられます。忠告者(メンター)の出現です。これは肉親以外の第三者である場合がほとんどです。主人公はそのメンターとともにライバルを倒します。

 そしてお宝(実際の宝ではなく自分の精神的成長であったりする)を獲得し故郷に帰るのです。そのとき主人公は昔の欠点を克服し完全なる者として帰還します。「物語」の本質とはこうした、

ビルディング・ロマンス(成長物語)

にあります。「上向きの履歴書」ともいわれますね。私たちは本を読みながら、映画を見ながらもうひとつの人生を生きています。「物語」は私たちに「生きる力」を与えてくれます。そうした意味でも、ぜひ子どもたちに良質の絵本を与えたいものですね。



以下のページもどうぞ

1.「9歳の壁」とは

2.思考力獲得の道すじ

3.子どもを賢くする4つの遊び

4.「ことば」と「遊び」の関係

5.手先と言葉と脳の関係

6.「絵本」は「生きる力」を育む!

7.「模倣」が意味するもの

8.ヨーロッパの幼児教育の歴史

 


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