子どもにけんかはつきもの。ケガはいただけませんが、けんかは自分の意見を主張する場でもあります。小さいうちに小さくけんかを体験しておくことに意味はあります。
けんかをすると「叩かれて痛い」です。「嫌なことをいわれて悲しく」なります。これも1つの体験です。しかしけんかの本当の意義は、むしろその後にあります。「仲直り」です。「謝るときの恥ずかしさ」や「いいよ!といわれて嬉しくなった」ことを実感できます。そして結果的に、
けんかする前より仲良くなっちゃった!
ことを体験します。「壊れたものは戻りうる」。こうしたことを子どもたち自身で体験する。その積み重ねが、子どもの心を着実に成長させていきます。
「仲直りできる力」とは、コミュニケーションの中でも最高レベルのスキルになります。それは「クレーム処理」の力につながるからです。仕事の中で最もつらいのは、怒り狂っているお客さんへの応対でしょう。人工知能の時代になっても絶対になくならない仕事、それは「謝る仕事」だといわれています。
クレームに臆病になって、心のバランスを崩す人もいます。クレーム処理ができることの前提に「仲直りできる力」があります。小さなうちからの実体験をベースに培うものです。しかしこれは…
(1)けんかをしないと実体験できません。さらにこれは(2)先生が教えられないことです。「先に謝りなさい」「悪いと思ったら素直に謝りなさい」などと口頭では教えられても、実際に体験してみないことには…
積極的にけんかを奨励しているわけではありません。しかし対人コミュニケーションにおける「けんか⇔仲直り」の意義は、ご理解いただきたいと思うのです。これはいじめ問題の解決策の1つでもあります。
いじめは大変深刻な問題です。いじめは小学校3,4年生から目立って起こり(これもまた「9歳の壁」の問題)、中1〜2でピークとなります。いじめ予防は、小学校に上がる前の幼児期までに行うべきでしょう。
↓「9歳の壁」についてはこちらをクリック
ここでは文科省が行った大変有名な長期研究について触れます。文科省のホームページから資料がダウンロードできるのですが以下、そのまとめです(「いじめ追跡調査2007-2009」にて検索)。
この長期研究は大都市近郊のある地方都市で行われました。市内すべての小中学校19校の全校生徒を6年間追跡しています。
特筆すべきは「個人を特定できる形」で調査を行ったということです。つまり、小学4年生のA君が6年間、学校で「いじめ」とどう関わったか。何回、どれくらいいじめられたか、わかるのです。
※ここでいういじめとは「仲間外れ・無視・陰口」のこと。
ではここで1つ考えてみてください。
小4〜中3の6年間、いじめ被・加害経験者は全児童・生徒のうち何パーセントだったでしょうか?答えはなんと90%!いじめと無縁でいることは難しいのです。被害者は毎回大きく入れ替わります。いじめを受けてもある時期になると止み、また他の誰かが始まります。そんなことがくり返されるということです。誰もが「いじめ」と無縁ではいられないのです。
では小4〜中3の6年間、不幸にもつねにいじめられ続けたのは1000名中何名でしょうか?
答えは3名。つまり0.3%の生徒が、残念ながらつねにいじめの対象であり続けたといいます。
いじめっ子になる3大要因もわかりました。
第1位:友人とのストレス 。「勉強、顔やスタイルをからかわれた」「悪口を言われた」ということが大きなストレスとなり、他人へのいじめになるということです。第2位:競争的価値観
。「成績、顔やスタイルが悪いとみじめになる」「人より得意なものがないとみじめになる」といったことが大きなストレスとなります。第3位:不機嫌・怒り。これは最もな理由です。
以上の3大要因のうち、第1位の友人とのストレスは圧倒的要因でした。いじめから守ってくれるのも友達。いじめに加担するのも友達。いったい誰を信じたらいいのか、といった感じでしょうか。
意外だったのは、「親からのストレス」「教師からのストレス」は、それほど大きないじめっ子になる要因ではありませんでした。やはり、鍵は「ともだち」。
将来のいじめ問題に、幼児教育はどう対処すべきか。私たちの解答が「異年齢保育」なのですが、それは「8.人に共感できる力」で詳しくまとめます。
以下に続きます。
1.手で考える力
2.似たものを見つける力(イメージする力)
3.仲直りできる力
4.気分を言語化できる力
5.ごほうびを先延ばしできる力
6.自分で決める力(自律性)
7.人を尊敬できる力
8.人に共感できる力
9.楽観できる力
10.自分にYES!と言える力(自己肯定感を育むほめ方)