「時間がないので早く食べて…」
「もっとたくさん栄養のあるものを…」
時間に追われていると、どうしても行動を急ぐようになります。どんどん子どもに食べてもらおうと、一口あげたらすぐ次の分をスプーンに乗せて目の前に持っていく…。忙しいときはつい無意識にやってしまうかもしれません。
しかしそれは子どもに無言のプレッシャーを与えることにもなります。そうすると子どもはよく噛まずに飲み込んでしまうことがあります。
(もう次が待っている。早く飲み込まなきゃ!)
というわけです。こうした与え方を習慣的に続けていくと、
「目の前に出された → だから食べる」
というように、食に向かう姿勢が受け身になっていきます。「自分のペースでしっかり噛み、唾液とよく混ぜ呑み込む。そして次の食べ物を取り込む」というリズムを心がけましょう。
私たちの園ではしっかり咀嚼する時間を与えています。子どもの様子をよく観察し「モグモグ、ゴックン!」した後に、スプーンで次の食べ物を運ぶようにします。
またこんなことはありませんか?
「子どもが食べ物をいじってボロボロこぼすんです」
そういって手の届かないところに食べ物を置く方がいます。食べ物は視界のはるか先にあり、目の前に運ばれきてようやく何かわかる、というわけです。
子どもには(○○がたべたい!)という意志があります。食べさせるものは親(保育者)が選ぶのではなく、子どもが自分で選ぶのです。そうした介助をしていくことが「意欲を育む食育」ということになります。
テレビ番組で、目隠しをした芸能人が高価な食べ物とそうでないものを食べ比べて、本物はどちらかを競うというものがありました。数十万円するワインとスーパーで市販されているワインとの違いは、どうやら目隠しをするとわからなくなってしまうようです。
この番組のことはともかく、もしこの文章を読んでいるのがお母さんであったら、試しに目隠しした状態で、ご主人の助けを借りて何か食べ物を口に入れてもらって下さい。いかがでしょうか?ものすごく不安ではないでしょうか?食べ物の情報が欠如している状態とはどのようなものかおわかりいただけると思います。
食べたいものを子どもに(次はあれ!次はこれ!)と選ばせることで、自ら食に向かう姿勢が作られます。子どもは目で見て、脳で認識し、(食べたい!)という行動を起こします。
「でも子どもの手が届くところに食べ物を置いておくといじってこぼして困ります」
そんな悩みを抱えている方への対処法は「少しずつよそう」ことです。
お汁ばかり飲みたい子どもがいます。でも上手に飲めない。こぼす。お母さんは困ってしまう…。そんなときはお椀に少しだけ注ぐにとどめます。これならば上手く飲めます。仮にこぼしても、少量なので被害(?)も少なく済むでしょう。
まずは子どもの気持ちを確認します。(もっとお汁がほしい)と意思表示するならば、おかわりをつぎ足してあげればいいのです。お汁の好きな子どもに、最初からお椀いっぱい注いで与えると、汁がなくなるまで飲み続けようとします。そしてこぼす。
お汁ばかり飲む子どもに「こぼすからお汁は最後まで飲ませない、目に触れさせない」というやり方をする方がいます。でも食事は、間で水分を取りながら進めるものですね。お汁も一緒に並べてあげましょう(ひとつのものを最後まで食べ続ける「一品食べ」にもつながってしまいます)。
以下に続きます。
1.「離乳食を食べてくれない」
2.【心】:まずは「安心感」
3.【唇】:口に突っ込まない
4.【唇】:「上手に食べる」は「上手に話す」につながる
5.【唇】:スプーンは水平に
6.【手】:手の動きを封じ込めない
7.【手】:指差しを通じたコミュニケーション
8.【耳】:適切な「ことばかけ」をしていますか?
9.【目】:目の前におかずを次々出していませんか?
10.【足】:ブラブラ、フラフラしていませんか?