ヒツジの体内に卵を産むある寄生虫。その便をカタツムリが食べます。そのカタツムリが移動した後に残った粘液を、アリがなめます。こうして寄生虫はアリの脳内に入るのです。
このアリは不思議な行動を始めます。昼は仲間と同じ。しかし夜、巣には帰らず草をのぼっていきます。ちょうどヒツジが食べやすい高さにくると、アゴでガチっと草にしがみつき離れなくなります。脳のアゴの働きを司る部位を操作してしまいます。そうしてヒツジに食べられるのを待つのです。
今度は鳥に寄生する虫。その糞をカタツムリが食べます。するとこのカタツムリ、行動ばかりではなく、形態までも変わってしまいます。
触覚が太く鮮やかになり、あたかも鳥の大好物のイモムシのようにクネクネ動きます。夜行性だったものが真昼にも動き回るようになり、簡単に鳥に見つかり…こうして循環は続くのです。
哺乳類も寄生されます。右の写真はトキソプラズマ原虫に感染したネズミです。なんと、宿敵のネコに恋してしまいます。
トキソプラズマ原虫はネコの体内で交尾します。その糞を食べたネズミは、ネコの尿に興奮するようになるのです(異性のネズミやウサギなどの尿には反応しません)。
脳内ではドーパミンが増加します。快楽に関わる物質です。恐怖を感じず行動が大胆になります。またトキソプラズマはオスの睾丸にも入り込みます。すると性ホルモンであるテストステロンが増加、メスを引き寄せ、子どもにも感染していくのです。
トキソプラズマはヒトにも感染します(世界人口の30%)。庭いじりや生肉を食べて感染することがあります。牛やヒツジがトキソプラズマに感染すると、筋肉の中に入り込むからです。
人間が感染すると交通事故を起こす確率が3倍になったというチェコの学者の報告があります。その他、自殺する確率が上がる、女性が性的に開放的になるという説も。ドーパミンが増えるので行動が大胆になるというのですが…。
私たちは寄生虫や菌に操られているのでしょうか?
❶HIV感染者の末期、患者に異常な性欲が出ることがあるといいます。エイズは性交渉で感染します。ウイルスは使命を果たすべく人体を操るのです。
❷コレラにかかると下痢をします。あたかも私たち自身が下痢して、菌を排出しているかのようです。しかしこれも菌がヒトDNAに働きかけているのです。
コレラ菌が増えすぎて、宿主であるヒトが死ねば自分たちも死にます。そこで、菌同士がコミュニケーションをとり合います。一定数以上になると信号を出し、ヒトDNAに指令します。腸壁の細胞をゆるめ、血液中から水分を呼び込み脱出します。これが下痢です。
❸インフルエンザに感染すると家にひきこもります。しかしこれではウイルスの使命が果たせません。ヒトを社交的にしないとウイルスは広がりません。
そこで面白い研究をした学者がいます。インフルエンザの予防接種をすれば社交性が変わるのではないかと予想したのです。その結果、内向的な人がいきなりパーティーに参加するなど、普段と正反対の行動をする人たちが観察されたといいます。
やはり私たちは操られているのでしょうか?
以下に続きます。
はじめに
1.血糖値スパイク
2.白砂糖の害
3.ペットボトルか?水筒か?
4.慢性炎症の時代
5.私自身の話
6.腸のバリア機能
7.日本の長寿村・短命村の食事
8.「食の主体性」とは?
9.コオロギはなぜ自殺するのか?
10.我々は操られているのか?
11.腸内細菌と脳の関係
12.あなたのチワワにエサを!
13.園での取り組み
おわりに