日本の主要疾患別死亡率の推移をみると、1945年あたりでは結核・肺炎・脳卒中が主な死因となっています。それが2000年ではガン・心疾患・脳卒中と変化しています。
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その明らかなターニングポイントが点線の1945年あたりにあります。実はこの年、抗生物質(ペニシリン)が一般に解禁されています。それまでは軍隊での使用に限定されていました。第二次世界大戦のノルマンディー上陸作戦(1944)で、アメリカ軍はペニシリンを飲みまくって敵陣に突撃したといいます。
ペニシリンは医学の世界に革命を起こしました。それまではちょっとしたすり傷がもとで死ぬことがありました。つまり「急性炎症」の時代です。外敵はつねに外にありました。私たちの免疫細胞はつねに皮膚や口・鼻から侵入してくる病原菌に備えていました。
しかし抗生物質が病原菌を殺し始めると、今度は「敵を失った免疫細胞が私たち自身を攻撃し始めた」。そんな説が出てきました。これが 「慢性炎症」 の時代というわけです。
ガン、糖尿病、肥満、アレルギー、うつ病、認知症、自閉症、動脈硬化…こうした病気の共通点に、免疫細胞の暴走による慢性炎症があるというのです。
肥満は脂肪細胞が炎症を起こしています。太っている人の脂肪細胞をみると、免疫細胞のマクロファージが群がっていて、まるで燃えているようだ、という研究者の言葉があります。動脈硬化や心疾患は血管の炎症、うつ病・自閉症・認知症なども脳の炎症が疑われています。
そのひとつの原因として、抗生物質が、人体に必要な腸内細菌にまで過剰な攻撃をしてしまったことがあげられます。
母親の腸内細菌を引き継いだ赤ちゃんは、幼児期までに腸内環境の基礎固めを終えるとすでに書きました。その際、腸は体内の免疫細胞をトレーニングすることがわかってきました。敵(病原菌・ウイルス)と味方(必要な腸内細菌等)の違いを教え込むのです。
しかしこの大切な幼少期に、抗生物質を多用すると腸内が乱れます。必要な訓練を受けていない免疫が暴走し、アレルギーや自己免疫疾患、肥満などが増え…そんな研究が今行われています。
ですからその根っこを断つのです。腸内環境を整え、免疫の暴走を防ぎ、慢性炎症を抑える。そうして、アレルギーや肥満などの21世紀型の病気に対処する。食育とは予防医学 なのです。自らの意志で、腸にやさしい食習慣を身につけることが大事です。
※安易な抗生物質の使用はいただけませんが、この薬はなくてはならないものです。お医者さんの指導のもと、必要な用法・用量にて服用してください。
以下に続きます。
はじめに
1.血糖値スパイク
2.白砂糖の害
3.ペットボトルか?水筒か?
4.慢性炎症の時代
5.私自身の話
6.腸のバリア機能
7.日本の長寿村・短命村の食事
8.「食の主体性」とは?
9.コオロギはなぜ自殺するのか?
10.我々は操られているのか?
11.腸内細菌と脳の関係
12.あなたのチワワにエサを!
13.園での取り組み
おわりに