座薬には即効性があります。直腸からすぐに血液中に吸収されるからです。だからこそ、腸にはバリア機能があって、体内に悪いものが入らないように守るのです。免疫細胞の約70%が腸に集中していることもうなずけます。
図は腸壁の断面図です。レンガのように並ぶ腸壁の細胞とその上を覆う粘液層が、血管内への細菌侵入を防いでいます。ここには3つのバリア機能があります。
①まず腸内にIgA抗体などの抗菌物質を出す②粘液層を厚くする③腸壁の細胞の結合を密にする。
以上の働きに腸内細菌が関与していることがわかりました。具体的には、腸内細菌が食物繊維を食べて出す代謝物の 「短鎖脂肪酸」がヒトDNAに指令を出し、私たちの健康を守ってくれています。
短鎖脂肪酸には次のような働きがあります。
まず❶のエネルギー源といえばブトウ糖ですが、大腸の細胞は短鎖脂肪酸が100%エネルギー源となります。さらにあまったエネルギーは全身をめぐり活用されます。
❷はダイエットに大いに関係します。なんと、短鎖脂肪酸が脂質吸収の調整を行っているというのです。
肥満とは脂肪細胞の肥大です。血液中に流れている脂肪を脂肪細胞が取り込み続け肥大していきます。しかしその脂肪細胞に短鎖脂肪酸が働きかけると、脂肪の取り込みをブロックします。食物繊維をとるとやせるのは、なにも便秘解消ばかりではないのです。
❸の腸のバリア機能はすでに触れました。腸内の不純物が血管内に入ると「炎症」の原因となります。短鎖脂肪酸がヒトDNAに働きかけて、粘液を増やし厚くします、腸壁の細胞を締めます。
それだけではありません。短鎖脂肪酸は「アレルギーを治す夢の免疫細胞」といわれる❹「Tレグ細胞」の産生まで行います。
ちなみに、このTレグ細胞(制御性T細胞という免疫細胞)は、大阪大学の免疫学教授、坂口志文先生が発見しました。坂口先生はノーベル医学・生理学賞の最有力候補といわれ続けています。
人間の免疫機構はときに暴走します。花粉や食物、あるいは自分の体など、害のないものまで外敵とみなし攻撃します。これがアレルギーです。Tレグ細胞は、そんな免疫の暴走を抑える役割を果たしています。
そして、このTレグ細胞を増やすのが、まさに短鎖脂肪酸であることが最近わかってきたのです。
以上のことは、私たちが意識して食卓に食物繊維を並べるだけで可能になります。しかし私たちは食物繊維をとらなくなりました。かつての日本人はたくさん食物繊維を食べていましたが…
以下に続きます。
はじめに
1.血糖値スパイク
2.白砂糖の害
3.ペットボトルか?水筒か?
4.慢性炎症の時代
5.私自身の話
6.腸のバリア機能
7.日本の長寿村・短命村の食事
8.「食の主体性」とは?
9.コオロギはなぜ自殺するのか?
10.我々は操られているのか?
11.腸内細菌と脳の関係
12.あなたのチワワにエサを!
13.園での取り組み
おわりに